牛のいのちを肌で感じる場所としての、牧場

日頃から牛を育てている牛飼いさんを先生に迎え、牧場を見学しながら牛たちについて学ぶ、「うしぼく牧場ツアー」。秋晴れの空のもと、2022年10月16日(日)に第2回目を開催しました。大人と子ども、総勢11名の参加者の方にお集まりいただき、牛飼いの秋山さんの司会と高尾さんの運転でうしぼくツアー号が出発。参加者の中には、牧場の近隣に住んでいる人だけでなく、兵庫県内の他の市から足を運んでくれた人や、中には東京から来てくださった人も。牧場見学では、牛舎の見学はもちろんのこと、エサ作りや牛の治療の様子も見学いただき、最後は牛の餌やりにも挑戦していただきました。牧場見学後は、牛にまつわるうんちくをクイズ形式で学ぶ「うしんちくクイズコーナー」に加え、六甲牛と神戸ビーフの食べ比べも実施。肉切職人の柿本さんが先生となり、お肉の選び方やおすすめの食べ方などを教えてくれました。

牛と親しむ入り口は、一つではない

今回のツアーでは11名の方にお集まりいただきましたが、一人ひとりの年齢やお住まいだけでなく、牧場ツアーに参加したきっかけもさまざまでした。アニマルウェルフェア(※)について関心がある人、家族が牛の飼育に携わっていた人、牛を育てている実際の現場を見学してみたい人、神戸ビーフを使った料理に関心がある人。ツアー中に投げかけられる質問のテーマが一人ひとり違ったことからも、ツアーに関心を寄せたきっかけの多様さが伺えます。うしぼくでは、「神戸から、牛とある暮らし。」という言葉を掲げ、牛の恩恵を様々な形で届けることを目指していますが、この「うしぼく牧場ツアー」一つをとっても、参加者の牛との関わり方はそれぞれ。牧場スタッフや運営チームが予想もしなかったことが、牛と親しむ入り口になるかもしれません。既存のイメージにとらわれすぎず、いろいろな間口を作っていきたいと、改めて感じました。

(※)家畜をできるだけストレスや病気から遠ざけ、快適な環境下で育てようという欧州発、世界で主流となっている考え方。

牧場は、牛のいのちを肌で感じる場所

ツアー終了後、ある男の子からこんな質問が。「牧場にいる牛は、どうやってスーパーのお肉になるの?」。この質問が投げかけられた時、以前の牧場見学でも同じ内容の質問をある子からもらったことを思い出しました。「大きくなった牛は『屠畜場』という場所に運ばれて、そこで牛たちは命を終えるんだよ。そこで体のお肉を切って処理をして、スーパーやお肉屋さんに並ぶよ。」と、どんな言葉で伝えるか少し迷いつつも、男の子の疑問に返答しました。目の前にいる牛たちはこの牧場で一生を終えるわけではなく、成長したら「牛肉」という食材となってスーパーや食卓に並ぶことがわかっているからこそ、牧場と食卓のあいだにある工程に関心を持って質問してくれたのだと感じます。

牛たちの鳴き声や匂い、エサをむしゃむしゃ食べてごくごく水を飲む姿。何度も牧場を訪れている身でありながら、私たちは牛たちのいのちを頂いているという事実を、単なる情報としてではなく、肌で毎回実感します。以前、牧場で撮影をしてくれたカメラマンさんや、レザープロダクトの作家さんと牧場を訪れた時にも、「いのち」というキーワードを残してくれたことを思い出しました。牛やお肉について楽しく学ぶ場所としてだけではなく、生き物のいのちを頂いていることを肌で感じる場所としても、この「うしぼく牧場ツアー」の時間を大切にしていきたいと感じました。

筆:うしぼく通信 企画編集 株式会社KUUMA  木村有希


お知らせのカテゴリー