牛のプロ、肉のプロ、料理のプロから学ぶ

51年前から牧場で牛たちを育て、いまや神戸に直営精肉店を2店舗、三宮を中心に多数の飲食店をパートナーにもつ神戸牛牧場、通称うしぼく。牧場を持ちながら精肉店を営むからこそつながる、牛飼いや肉屋、そして料理人という、牛や肉のプロたち。それぞれを先生に、学びを深めながら肉料理を味わう『うしぼく學校』の記念すべき第一回目を、2020年2月3日に開催しました。神戸牛牧場(以下、うしぼく)に関わるプロたちから学ぶ、牛たちとのあり方、肉の活かし方をレポートします。

「うしぼく學校、開校します!」
うしぼく學校
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うしぼく學校うしぼくの社長であり、牛飼いの池内洋三さんの「うしぼく學校、開校します!」という声とともに、うしぼく學校がスタートしました。19名の参加者の多くが、うしぼくの直営精肉店であるマチマルシェ御影店のお客様だったのですが、意外にもうしぼくが牧場を持って牛を育てていることを知っている方は、ほんの少しでした。神戸市内で、自ら牛を育て、精肉店を営み、飲食店舗にもお肉を卸す牧場は、ほんのわずかな存在です。「うしぼくの活動もまだまだ知られていないんですね。頑張らないと!」と、笑顔で話す池内社長。
うしぼく學校は、“牛を育てているからこそできる、胃袋を満たす以外の価値を神戸に届けていきたい”という想いから生まれたイベント。牛飼いの池内社長、肉屋の柿本店長、料理人の春日シェフの自己紹介が終わり、参加者のみなさんの期待をたっぷり受け、『第一部 牛飼いトーク』が始まりました。

アニマルウェルフェアは、牛たちを想う気持ち。
うしぼく學校
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うしぼく學校神戸市西区にある神戸牛牧場。都心部からは車で30分ほどと、目と鼻の先です。そんな場所で4,500頭もの牛たちを育てていることを池内社長が話すと、参加者からは「え〜しらなかった」と声がもれました。
牛たちの育て方についてトークが進みます。うしぼくで育てている4品種のうちのひとつである六甲牛は、オーストラリアで生まれた仔牛を輸入して育てている品種です。輸入の条件は厳しく、“アニマルウェルフェア”の観点でもうけられた基準をクリアしていないとそれが叶いません。でてきた“アニマルウェルフェア”という言葉。参加者のなかにその存在を知っているひとは、ほとんどいませんでした。まだまだ日本では馴染みのない言葉ですが、欧米諸国中心に世界では主流となっている、家畜を育てるうえで大切にされている考え方だと、池内さん。できるだけストレスがかからないよう、綺麗な場所で良質な飲み水や食べ物を十分に与え、丁寧なケアができる環境を整えることが大切なのだそう。

「約20年前にオーストラリアから仔牛を輸入するにあたって、うちの牧場の環境をがらりと変える必要はありませんでした。51年前から牛たちのことを考えて牧場を営んでいたので、自然と条件に当てはまっていたんです」と、話します。当日、進行とトークの対談相手を務めていたうしぼく通信(*)編集者は「当たり前のことを当たり前にできることがすごいですね。取材でたくさんの牧場を訪れましたが、うしぼくさんの牧場の美しさには、驚きました。本当にお世辞抜きで、綺麗なんです」と頷きました。
アニマルウェルフェアは牛飼いだけが大切にとする考え方ではなく、例えばお肉を買うとき、お肉をいただくとき、牧場以外でもできるアニマルウェルフェアを考えてみたいですね、と話し『第一部 牛飼いトーク』が終了しました。

(*)うしぼく通信・・・神戸牛牧場が発行する季刊誌  PDF版はこちら

お肉のこと、なんでも聞いてください。
うしぼく學校
「本日の持ち時間は、20分。さぁお肉のこと、なんでも聞いてください」と、堂々たるトークで始まった、肉のプロであるマチマルシェ御影店 店長柿本さんによる『第二部 肉屋トーク』。
こんなに生き生きと、肉について語る人はいないのではないでしょうか。会場も笑顔に包まれます。
うしぼく學校
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さきほど池内社長の話にもあがった、六甲牛の肉質について話を進める柿本店長。部位ごとの違いの説明やおいしい肉の切り方など、参加者のメモが進みます。様々な質問も参加者から飛び交うなか、おいしい肉は目利きできる、と話す柿本さん。「肉は、育て方や季節によって状態が常に変わります。生き物ですからね。今日一番おいしいお肉どれですか?と、ぜひ声をかけてください。とっておきのを提案します」と、笑顔で会場の心を掴みました。
惜しまれつつも『第二部 肉屋トーク』が終了。料理人の春日シェフのトークへ、バトンタッチされました。

六甲牛が、美しいロゼ色のローストビーフへ。
うしぼく學校
『第三部 料理人トーク』。池内社長、柿本店長のトークにも登場した六甲牛をつかったローストビーフのデモンストレーションが始まりました。
用意されていたのは、六甲牛のランプ。腰からお尻、ももにかけての部位です。六甲牛は、赤身がおいしいのでゆっくりと火をいれて味わうローストビーフがおいしいのだと話してくれた春日シェフ。家庭にある炊飯器で簡単につくれるローストビーフの作り方を教えてくれました。

うしぼく學校うしぼく學校レシピ PDF版データ

うしぼく學校
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肉の焼ける良い香とともに、参加者から次々に質問が飛び交いました。炊飯器がなかったら?代替えの調味料は?さまざまな質問に丁寧に答える春日シェフ。65℃を保ちながらゆっくりと加熱できればどんな方法でも構わない、など質問に丁寧に応えながら、焼き目がついた肉をオリーブオイルとスパイスとともにジップロックへいれて炊飯器へ。なんと簡単、あとは出来上がりを待つだけです。

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みんなで、いただきます! うしぼく學校
うしぼく學校
うしぼく學校先生をつとめた、池内社長も柿本店長も春日シェフも一緒に料理を囲んで、食事が始まりました。食卓に並んだのは、春日シェフが事前に会場下の御影キッチンで仕込んだローストビーフ。六甲牛の赤身の旨味が引き出された味わいに、参加者たちもおいしいと頷く姿が見られました。
うしぼく學校 うしぼく學校
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おいしい料理に、普段なかなか話せない牛や肉のプロたちとの会話がさらに食卓を盛り上げてくれます。
食事も終わる頃、さきほど仕込んだローストビーフの中心温度を鉄串で確かめる春日シェフ。中はきれいなロゼ色に仕上がっていました。
うしぼく學校 うしぼく學校
出来上がったローストビーフも、参加者とともに実食。六甲牛は脂身が少ないので、ぺろりと食べられてしまうという声も聞こえてきました。
そろそろ、うしぼく學校も終盤。最後にうしぼくマネージャー藤本さんから、お土産のマチマルシェ御影店で使えるチケットと、六甲和牛の絵がデザインされたオリジナルバックがプレゼントされました。
うしぼく學校うしぼく學校

参加者からは「普段聞けない貴重な話が聞けた」「一緒に食事ができたのが楽しかった」「牧場のことまで知れて良かった」など、たくさんの声をいただいた、第一回目のうしぼく學校。先生をつとめた3人のプロたちも、終了後は参加者のみなさんに喜んでもらえてほっと胸をなでおろしていました。次回の開催を、お楽しみに。
うしぼく學校
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・取材日;2020年2月3日
・取材場所;「ミカゲキッチン」2F キッチンスタジオ(兵庫県神戸市東灘区御影郡家1-14-6)
・文;株式会社KUUMA 濱部 玲美
・写真;YOSUKE TOKUNAGA