うしぼく通信 vol.8 編集後記

うしぼく通信編集チームによる、編集後記。うしぼく通信制作の裏側に生まれた、誌面には残らない小さいな気づきや温度のあるあれこれ。神戸市内という消費地と近い場所で約4,500頭もの牛たちを育てる牧場だからこそ提案できる、牛とともにある暮らし。うしぼく通信の制作を重ねる度に見えてくる、今の神戸牛牧場と牛たちとのあり方をつづります。


牛を育て、人も育つ

リニューアルから4号目のVOL.8が無事、発刊。VOL.8のテーマは、“うしぼくの人”。神戸牛牧場で働く人、特に若手の30代に注目しました。

神戸牛牧場は今年で53年。牧場としてだけでなく、組織(会社)という意味でも育ってきたのでは、とマネージャーの藤本さんは話します。というわけで、今号はうしぼくで育つ人を軸に企画を組むことに。過去の号は、トップ層にフォーカスを当てて話を聞いてきましたが、次世代の神戸牛牧場を作っていく若手メンバーにそれぞれの視点から話を聞いていったのです。

 

 

結論からいうと、全員、熱い志を持っていました。それはそれは、熱い。牧場で牛を育てる上で、エラーを解消していきたいと話す牛飼いの渕上さん。師匠を超えて、店長になるために自身の軸を磨く肉切りの森川さん。お客さんの記憶に残る接客を考え続け、日々店舗に立つ、岩本さん。社長の横で、神戸牛牧場のこれからを想像し描くマネージャーの藤本さん。牛飼い、肉切り、店舗スタッフ、マネージャーとそれぞれの視点をもった次世代に話を聞くことで、“牛を育てる牧場”という意味合い以上に、成長していく視点の重なりが見えてきました。課題と解決。それぞれの視点で、励み、トライアンドエラーを繰り返すことは、一人一人のレベルアップにつながるだけではなく、“神戸牛牧場”としてのレベルアップにつながるのだと、感じた取材でした。

 

お勧めしたくなる気持ち

神戸牛牧場には直営店が3店舗。だからこそ、お肉の評判も良くも悪くも直結。
毎号取材を重ねる『シェフがうしぼくを選ぶワケ』では、神戸元町のレストラン『Fusible(フュージブル)』を取材。取材中みえてきたのは、 “誰かに紹介したくなる”感覚。フュージブルと神戸牛牧場のきっかけは、店内設計をした建築家の今津さん。「お肉なら、神戸牛牧場のお肉がいいよ」と紹介したのが始まりだそう。情報や選択肢がたくさんあるからこそ、素直に、「これいいよ」「美味しいよ」と言いたくなる感覚は食べ物だけではなく、いろんなものを生み出す上で大事だなと改めて思い出しました。「これいいよ」には、新鮮さ、衝撃、安さ、面白さ、丁寧さなどなど。思い返すと、たくさんの何かが内包されていますが、“お勧めしたくなる”には共通して作り手の真摯な態度が潜んでいるように思います。

 

一回や二回で完璧な何かを生み出すことも、当たり前に完璧なものを生み出すことももちろんプロとしては大事な場面もあります。ですが、もっと大切なのは毎日変わりゆくことを前提に、ひたむきな真摯な態度で課題や素材に向き合うこと。思い通りにいかないことを愛しく思い、働き、日々成長していきたいなと思ったうしぼく通信VOL.8になりました。

筆:うしぼく通信 企画編集 株式会社KUUMA 稲垣佳乃子


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