うしぼく通信 vol.12 編集後記

うしぼく通信編集チームによる、編集後記。うしぼく通信制作の裏側に生まれた、誌面には残らない小さな気づきや温度のあるあれこれ。神戸市内という消費地と近い場所で約4,500頭もの牛たちを育てる牧場だからこそ提案できる、牛とともにある暮らし。うしぼく通信の制作を重ねる度に見えてくる、今の神戸牛牧場と牛たちとのあり方をつづります。


牛飼いさんの人柄にも触れた、神戸ビーフ座談会

「神戸で食事をしよう!」となったら、おそらく名があがるであろう、神戸ビーフ。“観光者向け”や“高級品”といった、一般的なイメージとは違う神戸ビーフの一面を伝えるべく、vol.12の制作に取りかかりました。「地元の人たちへに、美味しいお肉を届けたい」、そんな原点を持つうしぼくとしては、現状地元での消費が少ない神戸ビーフを、地元神戸の人たちにも届けたい想いがあります。牛の育て方や美味しさの特徴など、伝えたいことは色々ありますが、「まずは食べてもらおう!」と、神戸ビーフを囲んだ座談会の開催に至りました。


いざ、座談会当日。うしぼくの牛飼いさんたちと、地元神戸に住む大人とこどもが一同に集合。はじめはみんな少し緊張している様子。しかし、会が進むにつれ少しずつ牛飼いさんとの会話も増えてきて、表情がほぐれていくのを感じました。座談会では、牛やお肉について学べるクイズコーナーもご用意。4種類の牛の写真から、神戸ビーフになる資格を持つ但馬牛を見分けるクイズでは「こりゃあ、僕らでも間違うかもな〜」と声を漏らした牛飼いさんに対し、「この問題むずかしすぎ〜!」という子どもたち。

牛飼いさんと参加者の距離が少しずつ近づいていくのを感じつつ、お楽しみの食事時間がやってきました。「うまい!」「やわらかい!」と、子どもたちから嬉しい声がちらほら。大人たちからは「思っていたより脂っこくない」「肉感がしっかりあって美味しい」など、実際に食べたからこその言葉もいただけました。他にも、牛飼いさんと参加者たちが混ざり合う、印象的な場面がたくさん。「こっちも食べてみる?」と、牛飼いさんがこどもにハンバーガーをおすそ分けする場面や、牛飼いさんと子どもが将来の夢について語り合う場面も。神戸ビーフを味わってもらうべく開いた座談会でしたが、食べ手と作り手の距離がグッと縮まり、牛飼いさん一人一人の人柄にも触れてもらえた時間になりました。日常的にうしぼくの牛飼いさんたちとコミュニケーションをとっている私たち編集部としては、そんな牛飼いさんたちの人柄までまるっと感じていただける場を作ることができたのは、また違った嬉しさがありました。

愛着のそばに、人

そんな座談会を経て感じたことは、「“人”がきっかけとなって、ある物事への愛着やイメージが大きく変わる可能性がある」ということ。今号には「神戸ビーフを日常食に近づけるために、どんな提案ができるか?」という問いがありましたが、そこから発展して「新しい習慣は、どのようにして生まれるのか?」という問いについても考えていました。新たな習慣が定着するにはそれなりの時間がかかりますし、そもそもきっかけがなければ取り入れられません。その“きっかけ”をどんな切り口で作るか。物事の面白さや魅力を伝えることも、きっかけづくりの一つです。一方で、「大好きな人がおすすめするなら」「笑顔の素敵な人が作っているなら」と、自分が何かしら想いを寄せている人の存在がきっかけとなることで、何か新しい習慣取り入れたくなることもあります。

自分自身にも似たような経験があったことを思い出しました。あるお笑い芸人を好きになり、その人たちがおすすめする人や作品もどんどん好きになっていったこと。「あの美味しい魚を焼いてくれたおばちゃん、元気かなぁ」と、何も知らなかった遠くの島に、人を介して思いを馳せたこと。関心がなかったものへの興味や愛着が湧いたとき、そのそばには人の存在がありました。「このあいだ一緒に神戸ビーフを食べた牛飼いさん、元気にやっているかな」なんて考えてくれたりしているのかなと、ひとりでに想像を膨らませてしまいました。顔の浮かぶ “誰か”がたった一人いるだけで、ものごとへのイメージや愛着は大きく変わるのかもしれません。そんなことに気づかせてもらった、うしぼく通信vol.12でありました。

 筆:うしぼく通信 企画編集 株式会社KUUMA  木村有希


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