飼育方針

牛を大切に、育てる。
50年前から当然のこと

牛への敬意

牛にできるだけストレスをかけないよう、静かできれいな部屋で、いつも牛のおなかが満たされている状態、ゆっくりと眠れる環境をつくり、維持します。大声を出したり、急に動いたり、牛を怖がらせたりすることは決してありません。極力病気になることがないよう、こまめに1頭1頭を見守り、驚かさないよう小さな声で話しかけます。

優しく牛を見つめる飼育員の写真

牛を想い、牛と良い関係を築いていくために、何をすればいいのか。飼育員一人ひとりが考え、日々接しています。創業当時から変わらないこの方針は、世界では主流になっているアニマルウェルフェア(*)の考え方。藤本昭宏相談役は、「牛の気持ちにたった育て方を考えたら、自然とこのやり方になったんです」と話します。

牛舎で過ごす牛たちの写真

根底には、「牛はすごい」と、その存在価値を敬う気持ちがあり、飼育員の保苅真種さんはその理由をこう話します。「牛は、本来人間が食べられない草などの繊維質をエサとして食べ、大きくなり、人間が食べられるものを生み出し、あるいは食べられるものになってくれ、一生を終えます。牛の価値はここにある。牛はすごいんです」と。

*アニマルウェルフェア(Animal Welfare)とは

家畜をできるだけストレスや病気から遠ざけ、快適な環境下で育てようという欧州発、世界で主流となっている考え方。
結果として、生産性の向上や安全な生産につながるとして、昨今、日本政府もその重要性を説き、飼育管理のための指針を出しています。

牛も人間と同じ、みんな異なる性格。
だからそれに合った育て方を

主力の六甲牛は、アンガス種と黒毛和種とを掛け合わせた肉専用種。生まれてから10カ月くらいまでオーストラリアの雄大な自然のなかで育ちます。たくさんの群れで放牧されて過ごしていたので、神戸牛牧場へ到着してすぐは野性的で荒っぽい性格。

牛舎の見回りをする飼育員の写真

また、人間にもあまり慣れておらずちょっとした物音や人の声にびくびくしていますが、約16カ月間を神戸牛牧場で過ごしていくとおだやかになり、人が近づいても逃げなくなります。オーストラリアから子牛を輸入できるのは、アニマルウェルフェアの観点から見たオーストラリアの厳しい輸出審査基準(エスカス)を満たした牧場のみ。神戸牛牧場は、それをクリアする土壌が早くから根付いていました。

北海道や九州などの繁殖農家から子牛を仕入れる六甲姫牛や六甲和牛は、7〜8頭での少頭飼い。育った環境はオーストラリアほど広大な牧場でも、放牧でもないため、アンガス種よりはおだやかな性格。

仕入れたばかりの子牛の写真

但馬牛は、兵庫県但馬地方でもともと田畑を耕したり物を運んだりするために飼われていた役牛です。人が住む家屋と同じ敷地内で飼うことが多かったため群れでの飼育は合わないので、1部屋につき1〜2頭でしっかり手をかけて飼育しています。神経質で食も細いので、エサは飼育員が1頭ずつ手で丁寧にあげています。

牛の背を撫でる飼育員の写真

地元神戸の恵みがもらたす、おいしい水とともに

食味を決めるうえで大切な水も、神戸牛牧場の飼育員たちが飲む水と同じものをあげています。地下120m付近から汲み上げる六甲山系のおいしい水を毎日たっぷり飲んでいます。

牧草の写真。
エサの写真

また、エサは、飼料メーカーの市販品だけではなく独自で配合したもの。何種類かの牧草と、大麦やトウモロコシなどの穀類、そして豆乳粕や大豆粕などを、牛の成長に合わせて配合を調整していきます。いつも牛が十分にエサを食べられように、常に気を配り、多頭のなかで育つ牛の場合は、エサをあげたあとは必ず、力関係の弱い牛が食べ損ねていないか、1頭1頭確認してまわるのが日課です。