飼料へのこだわり

食べることは、生きること
地域のつながりで牛が育つ

牛たちの成長とともに
食事と向き合い続ける

牛たちの食事の時間は、毎朝8時30分から。1日10キロを食べる4,500頭もの牛たちの飼料は、総量40トンにも及びます。その飼料配合から牛たちに届けるまでを、5名の専門スタッフが連携しながら行います。19種ものたくさんの飼料の貯蔵庫から、大型トラックを使って牛たちのところまで、丁寧に届けていきます。

食事の時間になると、牛たちは飼育スタッフの方へ寄ってきて、柵から顔を出し夢中で食べ始めます。機械的に供給するのではなく、例えば繊細な性格の持ち主の但馬牛は一頭一頭手で食べさせるなど、牛種ごとに提供方法を調整。午前と午後、1日2回の食事。たくさん食べて健康的に大きく成長するんだよ、と想いを込め、時おり目を合わせながら与えていきます。


牛たちが食べるのは、飼料メーカーの市販品だけではなく、成長に合わせた神戸牛牧場(以下、うしぼく)特製の自家配合飼料。それぞれの飼料が持つ栄養成分を考慮しながら、混ざりやすい順番で攪拌機で配合します。

牛によって異なりますが、成長期間は大きく3つ。牧場へやって来て3ヶ月目までの初期、この頃は牧草をたくさん食べて胃を大きくし、いっぱい食べれる体の基礎をつくります。4〜7ヶ月目の中期では、より大きく成長できるようにエネルギーが豊富なとうもろこしと胃への負担がかからないように消化しやすいビール粕やふすま等を多く配合した飼料を与えていきます。8ヶ月目以降の後期は、出荷に近づき肉質や食味を整える要素が含まれる米ぬかや大麦を多めに。牛が育つための基礎となる成分に加えて、近隣で生産される飼料も活用しています。

体を大きく成長させるために大切なエネルギー豊富な『とうもろこし』

胃への負担が少ない『ビール粕』

牛たちが消化しやすい『ふすま』

肉質を向上させるといわれる『大麦』

どの成長期間でも牛たちの体調や食べ具合をよく観察し、気が付いたことがあれば専門医と連携しながら原因を考え改良することも大切なこと。毎日、一頭一頭の牛たちの成長と向き合っています。

地域に軸足をおいた飼料は
牛にも地域にもやさしい

飼料のなかで特に大切にしているのが、例えば近隣農家さんが育てる米だったり、地元の産業からでてくるものだったりと、つながりがあるからこそ牧場まで届いてくる“地域に軸足をおいた”飼料。

そのひとつ、神戸市東灘区にある白鶴酒造の酒粕は、牛たちの嗜好性が高いため食いつきが良く、与えるとすぐに寄ってきてくれる飼料。よく食べるので、成長にも効果的ですし、発酵飼料なので消化促進にもつながり牛たちの体の負担も軽減してくれます。



そのほか、清酒製造の過程で出てくる活性炭をアップサイクルした『サケ炭』も白鶴酒造と連携しながら牛たちに与えている飼料のひとつ。サケ炭は、発酵飼料として下痢の改善に役だったり、糞の匂いのもとを9割低減できるともいわれています。さらに、活性炭には牛の胃で生成されるメタン(温室効果ガス)の低減へ作用し、ゲップを抑制する効果があることが期待されています(注1)。

神戸にある牧場として、地元産業で生まれた飼料をできるだけ活用すること、そしてそれらが牛たちの健康だけでなく、環境にもやさしい。ほんの少しずつでも、牛たちが食べるものを通して地域貢献ができれば、そんな想いで毎年少しずつその割合を増やしていっています。

また、地元農家との連携も大切にしていることのひとつ。うしぼくのある神戸市西区櫨谷地域は、水がきれいな場所で稲作農家も健在です。稲藁は、できるだけ地元農家さんのものを優先して使うようにしており、海外産に比べると圧倒的に香りが高く色味も鮮やかです。青味が強い稲藁は肉質に影響するカロチン(ビタミンA)成分が多く含まれるので、与える分量や稲藁の状態に注意を払いながら与えています。良い効果として、牛のお通じにも良いとわかっているので、育てている牛たちに対して調達できる量はまだまだ少ないですが積極的に与えるようにしています。

そして最後に、体作りの基本であり、肉の食味にも大きく作用する水は、地元神戸の六甲山系の恩恵をうけたミネラルたっぷりのおいしい水。地下120m付近から汲み上げる水を、毎日たっぷり牛たちが飲める環境をつくっています。

つながりがあるからこそ活用できる“地域に軸足をおいた”飼料のおかげで、地域のあらゆるものから成長を支えてもらっていることを実感しています。

これからも神戸にある牧場から、牛や人、そして環境にやさしい取り組みを続けてきたいと思います。

(注1)サケ炭による効果効能…https://www.hakutsuru.co.jp/corporate/news/detail/20221208102215.html